■ 2005.4.29 Fri.
 もうとっくに期限を過ぎた作曲を抱えている。この、何とも不安定な状況を自分が作り出していると思うと腹立たしいばかり。

■ 2005.4.30 Sat.
 2時、来年の指揮者コンクールについての打ち合わせ。前 和男さん、尾高忠明さんと民音の人たち。どうも、日本が戦争のできる国、戦争をする国へと足早に近づいているような気がするのは私の思い過ごしだろうか。政党のビラを配っていて逮捕されたというニュースがあった。城山三郎さんが以前から何度も繰り返して言っておられる「言論の自由を奪うものを許さない」という強い言葉は、大きな犠牲を払った前の戦争を体験なさったお立場で、それ故に戦後かろうじて得たものが様々な自由であり、その中で絶対に失ってはならぬのが言論の自由であると発言しておられるのである。個人情報保護法という名で言論統制をし、自由を奪われることは、他の総ての自由を失うことになる、というお考えは説得力がある。ラムズフェルドさんが日本とアメリカの会議の席上で「平和協力活動は血を流してこそ未来に繋がる尊いものになる」と発言している。ベアテ・シロタ・ゴードンさんが仰るように「過去60年間、日本人の兵士が外国人の兵士を殺すということは一度も無かったし、また、日本人自身が兵士として殺されるということもありませんでした。」とは毎年末に「第9」を指揮する度にベートーヴェンの掲げた理想を思い、現在の自分たちの置かれている状況を考えて、これと同じことを合唱団の人たちと話し合ってきた。「愚かな人間の歴史に戦争の絶えたことはなかったが、だからといって戦争は避けられないと考えるのはよそう。何があっても平和を実現すると決意できるのは人間だけの特権なのだ。」という元木直人さんの発言もある。「爆笑問題」の太田 光さんは「日本以外の国は軍隊で領土を守ると発想して、それが世界の常識だろうけど、何も世界の常識に合わせる必要はないんじゃないですか。日本が一風変わった国であることに可能性を感じるし、気に入っているんです。」と言っている。音楽家としての我田引水ばかりでなくて、ベートーヴェンの掲げた自由、平等、連帯こそが真の平和に繋がる、という理想(それはフランス革命初期の思想でもあったろう)は私たちの憲法9条の思想そのものであり、それを守ることは、この上ない国際貢献といえるだろう。

■ 2005.5.1 Sun.
 作曲しなくちゃ、と思いながら憲法も気になる。「核廃絶、この当然のことを政府に求めなければならないのは、誠に遺憾です。恥ずべきことだと考えています。」とは服飾デザイナーの森 南海子さんの発言だが、訓練だからとか後方支援だからという理由で日本の軍隊がアメリカ軍と「合同」している事実を積み重ねているのは恐ろしいかぎりだし、そのアメリカは新しく小型の核兵器開発に巨額の予算を計上するという。東アジアの「不安な情勢」に備えるのだというが、日本の意見は何なのか、どうなのか発言すべきだろう。日本国憲法によってはっきり示されている規範に従って。

■ 2005.5.2 Mon.
 ドイツのシュレーダー首相は「現在生存しているドイツ人の圧倒的多数は、ホロコーストの罪を負ってはいません」と明確に発言しながら、ドイツの歴史を振り返り直視して、前の戦争の犠牲者と犠牲者の子孫と生存者に可能な限りの引責と償いを実現することは可能であると語っている。ユダヤ人以外の強制労働の膨大な人数の被害者と子孫に対しても補償を実現した首相が、しかも、更に戦争責任について事実の究明を続け、力の限りの保障への努力を約束し、公式な謝罪を表明している。「責任を取る」とはこういうことなのだと私は考える。

■ 2005.5.3 Tue.
 10時からN響の練習。予定されていた韓国旅行がいろいろな事情で中止になった代わりの企画。NHKホールが5日に使えるので、では「こどもの日」の演奏会にしようという趣旨。普段N響が滅多に演奏しない小品が多いので、案外練習に手間取る。今回共演する韓国の若いピアニストはテルアビブでのルビンシュタイン・コンクールで第3位になったばかり。日本の若いヴァイオリニストは気負いもなく、あっさりしているのが魅力。今日もとても好い天気。練習から帰ってきたら台所の天井の数ヶ所から水漏れしている。建ってから30年以上だから仕方が無いといえるのかもしれないが、管理会社から若い男性二人が駆けつけてきて、夜8時過ぎまでかかって応急処置をしてくれた。家内も私も何だか酷く草臥れてしまった。

■ 2005.5.4 Wed.
 今日も10時からN響の練習。アンコールに演奏する予定の韓国民謡の編曲が酷いが、今更やり直しもできない。

■ 2005.5.5 Thu.
 11時、NHKホールで最後の練習。家へ帰るには時間が短いので、やたらに人がたくさん歩いている渋谷付近をぶらついて軽い食事をした。開演4時。時間も曲目も、何とも中途半端なのに、案外たくさんのお客様が来て下さった。子どもたちもたくさん来ているので、ややざわついた客席だが、こんなことも、たまには良いかもしれない。