■ 2003.2.17 Mon.
 お昼過ぎから家内と新宿に出かけて銀行や郵便局や本屋を巡り、途中でお茶を飲み、夕食の材料を少々買って帰る。二人とも人混みに出かけることが好きではないし、そういう機会も多くないのでとても疲れた。

■ 2003.2.18 Tue.
 名古屋文化振興賞「作曲」(室内楽作品)の応募作品を丁寧に見る。70曲近い。力作もあれば、思わず笑ってしまうような発想や書法のものもある。今年が第19回だそうだが第1回から三善 晃さん、池辺晋一郎さんと私が審査員、お二人は教育者でもあるから作品の分析も詳細で理論的で博識でもある。私はそれに較べると演奏家としての経験と直感が多いのだろうか、判断がややあまいかもしれない。こういうことだから作曲も指揮も誰にも教えられないし、教えたことが無いのは当たり前だろう。今回の作品の中で私が面白いと思うものにお二人がどんな評価をなさるか楽しみである。

■ 2003.2.19 Wed.
 朝、病院へ検査に行く。森川宗弘氏からどんどん切符の追加を注文されて恐縮しっぱなし、ありがたい。息子からも注文が届いた。これで客席より舞台上の人数が多い、なんてことにはならないだろう。夕べ突然、申 秀貞先生から電話を戴いた。今、日本に来ているよ、とおっしゃるから是非お目にかかりたいとお話していたが、本荘玲子さんも丁度都合がつくからと赤坂でお会いすることになった。7時、赤坂見附集合、本荘さんの案内で美味しいてんぷらを食べながらつもる話をする。申先生をお送りした先は、たまたま私たちが子どもの頃から数十年暮していたところなので、何だか父や母の所へ「ただいま」と帰るような不思議な気持ちになった。

■ 2003.2.20 Thu.
 2時から渋谷で「名古屋文化振興賞」の審査。3人の意見はそんなに違わないからスラスラと話が進んで最終的に入選作1曲を決めるところで意見が分かれた。三善さんと私が面白いと思った作品の一部を池辺さんは陳腐だとお考えで、しばらく、残った3作品のスコアを見ながら討論したが、それでは2対1だしこれに決めようかと話している時に、池辺さんがある楽器に演奏不可能な低音が2ヶ所も書いてあることを発見した。これは作曲家として基本的な知識の欠如であって、作曲賞の対象とすることはできない。面白そうだから聴いてみたかったのに、と負け惜しみを言いながら、もうひとつの力作を入選とした。佳作もひとつ決めた。帰り道に「タワー・レコード」に寄ってCD数枚を買う。

■ 2003.2.21 Fri.
 新幹線で仙台へ。いつもは地下鉄で東京駅へ行くのだが、韓国の事故直後で薄気味悪いので初めてタクシーを使う。我ながら可笑しいとも思うが、それでなくともこの頃の東京の電車の中は油断ならない雰囲気なのである。「若草物語」の練習はチャイコフスキー;ピアノ協奏曲、グリーク;ピアノ協奏曲、ヴュータン;ヴァイオリン協奏曲第5番、独奏は皆さん高校生。今日はヴァイオリニストが一番落ち着いていたようだが、3人とも積極的で、やりたいことがたくさんあって頼もしい。

■ 2003.2.22 Sat.
 午後、二日目の練習。独奏者は3人とも見違えるようにオーケストラとのやり取りが出来るようになっている、素晴らしい。実は昨日仙台に着いてから、演奏会用の縞ズボンを荷物に入れるのを忘れたことに気がついた。仕方が無い、東京へ取りに帰るかと思った時に、ホテルの(婚礼用の)貸衣装にあるのではないかと思いついたのは家内。明日はその貸衣装の縞ズボンで間に合わせることになった。

■ 2003.2.23 Sun
 10時半から練習、音楽会の開演は午後2時。たくさんのお客様が来てくださる。3人の若い音楽家たちはみんな立派に演奏したが、高校生の年齢は音楽家としてはもう一人前、言わば大人の仲間に入るところだから、指を速く動かせたり、大きな音を出せたりするだけでは充分ではあるまい。自分でものを考えることが出来るかどうか、判断力をしっかり身につけているかどうかが大切であるに違いない。それはきっと、それぞれの家庭や師事している先生方の問題でもあろう。音楽が見せかけの効果や表情だけでは何も伝えることができないことを、また、改めて教えられる。ヴァイオリンの瀧村依里(たきむら えり)さんの音楽が特に素晴らしかった。機会があったらまた共演したいものである。仙台フィルは緻密な神経と見事な集中力で若い音楽家たちを支えた。ホテルに帰って6時から仁科雄一郎先生ご夫妻、鈴木信男先生ご夫妻とゆっくり食事をしながらお話する。普段から仙台フィルを応援してくださっている方々だが、4月から始める室内楽のシリーズも応援して戴きたいとお願いしているところである。こちらの準備が何も出来ていないのにあつかましいお願いをしているので、私ももう少し働かなければ申し訳ない。

■ 2003.2.24 Mon.
 仙台は雪がちらついている。お昼前の新幹線で帰京したら東京も雪、寒い。